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航空連合 ジェンダー平等・多様性推進計画
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航空連合 ジェンダー平等・多様性推進計画(2025.10~2030.9)

2025年10月4日

1.はじめに

航空連合の職場で働く仲間は、性別や年齢、国籍、障がい、働く時間の制約の有無、キャリアなど様々な観点でいっそう多様化しており、それにともない、価値観や職場での問題も多様化している。多様化する職場に寄り添い問題解決を図るには、これまで以上に広く柔軟な視点で職場を点検することが労働組合に求められている。労働組合がより広く柔軟な視点で取り組んでいくためには、執行部自体の多様性を広げることが重要であり、女性比率が高い航空関連産業の職場特性を踏まえれば、ジェンダー平等の推進は重要な一手となる。

執行部の多様性を広げる第一歩として、性別に偏りがない組織を作ることで、より多面的な議論が可能となり、新たな発想やイノベーションが生まれ、組合活動の進化につながる。より多くの人の組合参画が可能とすれば、組合組織の活動もまた持続的なものとなる。

これらジェンダー平等を進めることの必要性と意義に鑑みて、航空連合では2021年10月に初めて「ジェンダー平等推進計画」を策定し、この間、精力的に取り組んできたが、今般、同計画の到達点を踏まえ、2025年10月から2030年9月を期間とした新たな計画を策定する。航空連合の各職場や労働組合活動において、多様性が尊重され、一人ひとりが安心して個性と能力を発揮できることをめざし、これまでに推進してきた取り組みを基盤としつつ、さらなる取り組みを進めていく。

そのうえで、本計画については、生物学的な「男女」だけではなく、男女どちらでもない、もしくは性自認が不明の方も含めた計画であること、「ジェンダー平等」のみならず「多様性・公平性の包摂」という概念まで主旨を拡張することをめざし、名称を従来の「ジェンダー平等推進計画」から、新たに「ジェンダー平等・多様性推進計画」とする。なお、計画にある「男性」「女性」については、すべて性自認に基づいた性別とする。

2.ジェンダー平等を取り巻く環境

<世界>

国連が採択した持続可能な開発目標(SDGs)のうち、目標5として「ジェンダー平等を推進しよう(Achieve gender equality and empower all women and girls)」が掲げられているほか、2015年に「国連女性の地位委員会」が「203050」(2030年までに意思決定の場に女性が50%入ること)を提唱している。ESG(Environment≪環境≫、Social≪社会≫、Governance≪ガバナンス≫)投資に対する関心の高まりもあり、社会的にも、経済的にも、ジェンダー平等の機運がますます高まっている。

<日本>

「世界経済フォーラム」が国別に男女格差を数値化した「ジェンダーギャップ指数2025」では、日本は総合順位で調査対象となった世界148カ国中118位であり、主要7カ国(G7)では引き続き最下位となった。ジェンダー平等の推進は、私たちがめざす社会の実現に必要不可欠な課題であるにも関わらず、日本の取り組みは依然として遅く、国際的な評価も極めて低いままである。管理職や意思決定の場における女性比率は依然として低く、男女間賃金格差も課題である(※)。働く現場のみならず、家族間や社会における慣習も含めて見直していくことが欠かせない。

※2025年3月に内閣府「女性の職業生活における活躍推進プロジェクトチーム」がまとめた報告書において、男女間賃金格差が比較的大きい業種として金融業・保険業、食品製造業、小売業、電機・精密業と並んで航空運輸業が挙げられ、業界団体に対して格差解消に向けたアクションプランの策定が要請された。

3.航空連合におけるジェンダー平等のこれまでの取り組みと成果

  • 航空連合では、この間の各期運動方針において「航空連合は多様性を尊重し、一人ひとりが活躍できる組織運営に努めます。特に、第22期に策定した『航空連合ジェンダー平等推進計画(2021.10-2025.09)』の達成を目指すとともに、『ジェンダー平等推進に関する活動』に積極的に取り組みます。」と掲げ、ジェンダー平等と多様性推進に資する取り組みをおこなってきた。
  • 「航空連合ジェンダー平等推進計画(2021.10-2025.09)」に基づき、【職場における労使のアクション】および【組合組織におけるアクション】を掲げ、それぞれ取り組みを推進してきた。
  • 【職場における労使のアクション】においては、2025年度からの法対応の必要性も踏まえ、育児/介護/治療等と仕事の両立支援について法対応を上回る制度拡充に取り組んできた。
  • また、社内での女性活躍推進に関わる研修制度の充実、キャリア形成を支援することを目的とした休職制度の導入等に関しても、加盟組合によって進捗が図られつつある。
  • 航空連合が主催する女性組合役員を対象とした研修「WINC(Woman’s Interactive Networking Community)」は、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)への理解を深める機会としても活用されている。
  • 【組合組織における労使のアクション】においては、組合執行部の女性参画比率向上も一定の成果を挙げてきた。

航空連合全体の目標達成状況(女性比率)

  第21期 第22期 第23期 第24期 第25期 第26期
目標 30% 35% 35% 35% 35% 35%
中央執行委員会 32.4%
(34名中11名)<達成>
29.4%
(34名中10名)<未達>
34.4%
(32名中11名)<未達>
37.5%
(32名中12名)<達成>
37.5%
(32名中12名)<達成>
34.4%
(32名中11名)<未達>
定期大会 32.5%<達成> 未集計(※) 36.6%<達成> 33.2%<未達> 32.8%<未達> 31.1%<未達>
中央委員会 33.3%<達成> 32.5%<達成> 35.0%<達成> 33.6%<未達> 35.1%<達成> 36.0%<達成>

※コロナ禍での大会開催だったため女性枠を設定しなかった。

航空連合全体の目標達成状況(女性比率)

目標 全カテゴリー
運動方針への記載
全カテゴリー
女性役員比率目標の達成状況
カテゴリー①
(女性組合員比率50%以上の労組)
カテゴリー②
(女性組合員比率30%以上50%未満の労組)
カテゴリー③
(女性組合員比率30%未満の労組)
第25期 30% 60% 59% 50% 67%
第26期 27% 52% 62% 69% 28%

4.航空連合におけるジェンダー平等に関する課題認識

「職場」と「組合組織」に分けてジェンダー平等に関する課題を整理すると、以下の点が挙げられる。

<職場において>

  • 法以上の両立支援制度の拡充
  • 男性の育児参画の質的向上
  • アンコンシャス・バイアスに基づいた能力発揮要因の打破(「ケア」に関わる労働負担が女性に偏りがち、特定業務における性別の偏りが大きい)
  • 管理職のジェンダーバランス改善(指導的立場の管理職における女性比率の低さ)
  • 人的資本情報に基づく労使協議等の実施

<組合組織において>

  • 組合活動とライフイベントの両立支援(育児・介護・治療等と組合活動の両立の難しさ)
  • 組合の活動スタイル・運営改善(時間的負担が大きい、などのイメージ)
  • 女性組合役員のすそ野拡大(「組合活動は男性がやるもの」というイメージ、男性が多くを占める組織に入ることの心理的なためらい、家事・育児との両立がより求められる傾向にある女性にとっての活動の難しさなど)
  • 女性の三役への登用
  • 「運動方針・実行計画などへのジェンダー平等に資する内容を記載」している加盟組合の拡大
  • 「カテゴリー③(女性組合員比率30%未満の労組)」における女性役員選出
    ※第26期(2024年12月実施)調査における目標達成率は28%
    →具体的な要因:「女性役員の担い手が少ない」、「女性役員の減少」、「女性組合員増加に対する女性組合役員不足」

5.航空連合ジェンダー平等・多様性推進計画(2025.10-2030.09)

〈組合組織におけるアクション:ジェンダーバランス改善〉

主体 内容
航空連合全体
  • 航空連合中央執行委員会/大会/中央委員会の女性参画率について、早期に40%以上を達成し、さらに「203050(2030年までに50%)」を志向して取り組む。
  • 本部事務局の女性比率について、クリティカル・マス(30%)を早期に達成し、さらに「203050(2030年までに50%)」を志向して取り組む。
加盟組合
  • 運動方針、実行計画などに「ジェンダー平等」に資する内容を明記する。
  • トップリーダー自らが、ジェンダー平等・多様性推進についてメッセージを発信する。
カテゴリー①
女性組合員比率50%以上の労組
  • 2030年9月までに女性役員比率(支部など内部機関含む)を50%にする。
  • 2030年9月までに四役における女性比率を50%にする。
カテゴリー②
女性組合員比率30%以上50%未満の労組
  • 2030年9月までに女性役員比率(支部など内部機関含む)=女性組合員比率にする。
  • 2030年9月までに四役における女性比率を組合員比率と同等にする。
カテゴリー③
女性組合員比率30%未満の労組
  • 2030年9月までに女性役員比率(支部など内部機関含む)=女性組合員比率の4分の3にする。
    ※数値目標を継続的に達成するためのロードマップと取り組み例として【STEP】を設定する。
  • 2030年9月までに四役における女性比率を1名以上とする。

<数値目標を継続的に達成するまでのロードマップと取り組み例>

※主にカテゴリー③の労組向けに設定するが、カテゴリー①・②の労組においても取り組みの参考とする。

STEP1:運動方針に「ジェンダー平等に資する内容」を明記する。

STEP2:トップリーダー自らがジェンダー平等・多様性推進についてメッセージを発信する。

STEP3:活動への参画のすそ野を広げるため、女性代議員数の増加を図る。

STEP4:活動の参画を促進するため、会議や研修などの開催時間・場所・方法を工夫する。

STEP5:単組の中に女性委員会やランチ会など、女性役員や組合員が集える場を設定する。

STEP6:WINCへの継続的な出席を促す。

STEP7:女性役員選出後に定期的な個別面談を実施し、育成・フォロー・サポートをしていく。

地方組織
  • 地方組織執行委員の女性比率30%以上(クリティカル・マスの達成)を目指す。その上で、四役における女性比率の向上を図る。
女性役員の育成とフォロー
  • 女性役員の育成機能として、WINCを継続・強化し、加盟組合・地方組織からの参加率100%を目指す。
  • 女性役員選出後のフォローを実施する。

6.課題認識に基づくジェンダー平等・多様性推進のアクション

航空連合ならびに各加盟組合は、以下の取り組み例を参考に、ジェンダー平等・多様性推進のアクションに取り組む。

①職場における労使のアクション

項目 目標・取り組み例
1 ライフイベントとの両立支援
  • 育児/介護/治療等と仕事の両立支援(諸制度が取得しやすい風土醸成)
  • 育児や介護の両立支援制の周知に取り組むとともに、誰もが仕事と生活を両立できる職場環境の実現に向けて取り組む。(年次有給休暇の取得促進、フレックスタイム制、テレワークを活用した柔軟な働き方等)
  • 「男性労働者の育児休業取得率」を確認するとともに、男性の育児参画の促進(取得日数増加を含めた質的向上)を図る。
  • インターバル勤務協定の締結を推進するとともに、長時間労働を徹底して見直す。
2 アンコンシャス・バイアス
(無意識の偏見)に基づいた行動様式からの脱却
  • 「ケア」に関わる労働負担が女性に偏りがちであることを踏まえ、これまでの慣習や思い込みで組織運営がされていないか、また、性別に偏った業務分担がされていないか、職場の点検・是正に努める。
  • アンコンシャス・バイアスの自覚を促す取り組みを推進するとともに、職場におけるジェンダー・バイアス、性的役割分担意識の払拭に向けて取り組む。
  • 職場に性的指向・性自認(SOGI)の多様性尊重の観点から組織運営、施設・設備を点検し、必要な是正を図る。
  • 外国人・障がい者など多様な人材の活躍を促進する取り組みをさらに強化する。
3 働きがいを実感できる
キャリア形成のサポート
  • 「働きやすさ」だけでなく、「働きがい」を実感できるかという視点に基づき、人事諸制度や運用面を点検する。
  • 女性管理職比率の現状および目標値を確認するとともに、その達成に向けて前提となる「管理職をめざしたい」と思える環境整備に取り組み、キャリア形成をサポートする体制充実に向けた取り組みを強化する。
  • 業種や職場実態に応じて、会社に積極的に女性を採用するよう働きかけをおこなうとともに、職場でさらなる女性活躍推進が図られるよう、「男女間賃金格差」や「女性管理職比率」の現状分析・是正に向けて労使で取り組む。

②組合組織におけるアクション

項目 目標・取り組み例
1 ジェンダーに関する組織方針の明確化
  • トップリーダー自らが、運動方針や大会・内部会議、教宣物等においてジェンダー平等・多様性推進についてメッセージを発信する。
  • 運動方針、実行計画などに「ジェンダー平等・多様性推進」に資する内容を記載する。
2 ワーク・ライフ・ユニオンバランス
  • 組合役員を務めること、会社業務、育児や介護・治療などとの両立を可能とする組合運営をめざし、組合内での支援体制を確立する。
3 組合活動のスタイル変革・運営の工夫
  • 組合役員への負荷も考慮し、会議や研修など開催時間・場所・方法を工夫し、多様な人たちが組合活動に参加できるようにする。
<取り組み例>
  • 業務終了後におこなっていた会議をランチ時間にするなど、会議の開催時間を見直す。
  • 「長時間(深夜)に及ぶ会議」を「終了時間」を決めた会議とする。
  • 会議のゴールと目的を明確化した上で、オンラインと対面を有効活用する。
  • 夜の懇親会を前提とせず、新たにつながりを作れるような交流方法を検討する。
  • 性的指向・性自認(SOGI)の多様性尊重の観点から、多様性を認め合う組織風土の醸成に向けて取り組む。

※加盟組合のカテゴリーについては「参考資料2」を参照のこと

7.計画の進め方

  • 航空連合ならびに各加盟組合は、本計画の趣旨を十分に理解した上で、上記の目標や取り組み例に基づき、ジェンダー平等・多様性推進に積極的に取り組む。
  • 航空連合本部は、女性組合役員を対象とした研修「WINC」を継続開催し、加盟組合や地方組織の女性役員の育成やネットワークづくりに努める。また、ジェンダー平等・多様性推進委員会(現行の「ジェンダー平等委員会」から改称予定)を中心に、加盟組合の取り組みの参考となるような勉強会や事例紹介をおこなう。
  • 航空連合本部は、目標の達成状況やジェンダー平等・多様性推進に関する意識について毎年11~12月に調査し、速やかに結果をとりまとめて加盟組合と共有し、取り組みの推進につなげる。
  • 航空連合本部は、毎年6月(連合が定める「男女平等月間」)に「ジェンダー平等・多様性推進フォーラム(現行の「ジェンダー平等推進フォーラム」から改称予定)」を開催し、ジェンダー平等・多様性推進について有識者や他産別の取り組み等から新たな知見を得る。
  • 取り組みを進めるにあたっては、連合の「ジェンダー平等推進計画」フェーズ2とも連携を図り、そのリード役をめざして取り組む。